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東京地方裁判所 昭和47年(ワ)7474号 判決

原告 前田祐二 外三六七名

被告 ノースウエスト・エアラインズ・インコーポレイティッド

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告は、原告らに対し、別表差額欄記載の各金員及び原告目録一記載の原告らに対し右各金員に対する昭和四七年九月一三日から、原告目録二記載の原告らに対し右各金員に対する同年一〇月一七日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行の宣言

二  被告

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告は、航空運送事業を目的としてアメリカ合衆国法に準拠して設立された外国会社であり、原告らは、いずれも被告に雇用され、被告会社日本支店管内の労働者で組織するノースウエスト航空日本支社労働組合(以下「組合」という。)に属している者である。

2  被告は、昭和四七年七月一日、組合に対し、「米国パイロツト労働組合の組合員のうち、被告に雇用されている組合員(以下「パイロツト組合」という。)が全面ストライキに入り、被告の飛行便は全面運行停止になつた。日本支社(東京、大阪、沖縄)関係の業務はほとんどなくなるので、パイロツト組合のストライキが解除されるまで従業員を休業させる。」旨通告し、原告らに対し別表休業始期日欄記載の日に休業を命じ、原告らを右各日から同年一〇月七日ないし同年一一月一日まで就労させなかつた。

3  原告らは、被告から休業の通告があつたので、昭和四七年七月二日組合を通じてパイロツト組合のストライキ実施期間中といえども、被告の指示があればいつでも就労できる旨口頭で伝え、労務の提供をしたが、被告は右労務の提供を受領することが可能であつたにもかかわらず、原告らを就労させず、原告らの労務の受領を拒否した。従つて、原告らは、被告に対し民法第四一三条により右期間中の賃金請求権を有する。

4  仮に右主張が容れられないとしても、原告らの労務の給付は、被告の休業命令により就労が拒否されていたので、履行が不能であつた。右履行不能は、次のとおり被告の責に帰すべき事由により発生したものである。従つて、原告らは、被告に対し民法第五三六条第二項により右期間の賃金請求権を有する。

(一) 被告の休業命令は、パイロツト組合のストライキに起因するものであるが、右ストライキは、同組合が被告との労働協約の改訂にあたり、被告会社における低劣な労働条件を業界の平均的水準にまで引上げることを要求したところ、被告においては右要求に応じうるだけの資力があつたにもかかわらず、これに誠実に対応せず、パイロツト組合がストライキを実施した場合、被告は、同社を含む米国の一部航空会社間で締結されている相互援助協定により他の航空会社からストライキの期間中一定額の補償を受けるので、何ら苦痛を感じないばかりかかえつて利益をあげることができるため、パイロツト組合をストライキに追い込もうと企図し、労働協約改訂申入れに対する回答に九ケ月もの長期間をかけ、しかも両者の交渉が行き詰つても何の打開策も構ぜず、労働協約の改訂交渉に対する誠実な姿勢を示さなかつたため発生したものである。民法第五三六条第二項にいう被告の責に帰すべき事由とは、労働契約に関する限りは、不可抗力を除くすべての事由をいうものと解すべきである。しかるに本件履行不能は、前記のごとくパイロツト組合のストライキによつて生じたものであつて、右ストライキは、被告にとつては単なる企業の内部事情にすぎない。従つて本件履行不能は、不可抗力によるものとはいえないから、被告は、同条項により前記休業期間中の賃金支払業務を免れることはできない。

また、前記ストライキの経緯からすれば、同条項につき右のような解釈をとらなかつたとしても、少なくとも本件においては、被告の責に帰すべき事由あるものといえる。

(二) 航空会社は、航空便が運行停止しても業務の全部が停止するものではなく、被告の努力次第で社員の研修訓練や通常の業務中にはなしえない書類の整理、職場環境の整備点検等の業務を作り出し原告らを就労させることが可能であつたのに、被告は、この努力をせず、パイロツト組合のストライキを奇貨として、当時被告と組合との間で労働協約改訂のため重ねられていた団体交渉を被告に有利に終結させるとともに、組合の組織を破壊することを目的として原告らを休業させたものである。しかも、被告は、非組合員のうち、スチユワーデス、ツアーエスコート、新規採用のいわゆる成田要員等その性質上休業を避け得ない者を除く他の従業員に対しては原則として休業を命ぜず、本来の業務以外の業務まで与えて就労させておきながら、組合員については非代替的職種の業務に従事する例外的な者を除き休業を命じるなど組合員と非組合員を差別して組合員を不利益に取扱つたものである。従つて、この点からも本件履行不能は被告の責に帰すべき事由によつて生じたものといわなければならない。

5  原告らの本件休業がなかつたならば受給しえた昭和四七年七月分(八月分)の賃金は別表七月分(八月分)平均賃金欄記載の金員であり、原告らは、被告から同月現実に労働した期間の賃金及び労働基準法第二六条所定の休業手当として同表七月分(八月分)支給総額欄記載の金員の弁済を受けたので、右賃金からこれを控除するとその残額は同表差額欄記載のとおりである。

6  よつて、原告らは、被告に対し昭和四七年七月分(八月分)の未払賃金として別表差額欄記載の金員及びこれに対する原告目録一記載の原告らに対しては弁済期後である昭和四七年九月一三日から、同目録二記載の原告らに対しては同じく同年一〇月一七日から各完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1及び2の事実は認める。

2  同3の事実は否認する。

原告らは、被告の休業命令に従つて平穏に休業したものであつて、労務の提供はしていない。

3  同4(一)の事実は否認する。

労働者がストライキをするか、交渉によつて妥結するかは労使の力関係及び利益損失の計算に基いて決まるものであり、使用者の誠意のみによつて避けられる問題ではなく一種の不可抗力によるものであるから被告に帰責事由があるとはいい得ない。のみならず、被告とパイロツト組合の交渉は二〇〇項目以上の諸問題について、昭和四六年四月以降一年以上にわたり一〇〇回以上の交渉が重ねられ、右組合のストライキ実施の段階においてなお解決できないものであつたから、尚更被告の責に帰すべきいわれはない。

4  同4(二)の事実は否認する。

パイロツト組合のストライキのため飛行便の運行が全く停止し、その結果原告らの従事すべき業務がなくなつたため、被告は、組合との次のような合意に基いて原告らに休業を命じたものである。すなわち、被告は、昭和四七年七月二日パイロツト組合のストライキについて組合に事情を説明し協議を重ねた結果、組合との間で、ストライキによる業務停止期間中、組合員はその保有している休暇をとり、あるいは被告に対し労働基準法第二六条の休業を願出ることができるが、なお右による所期の従業員数を削減できない場合には被告は、同条により組合員に対し休業を命じうるものとし、右休業命令の適用順序は一九七二年一月三一日付で失効した労働協約の第二四条の規定に基づいて行なう旨の合意書を取交した。そして、右協約第二四条は人員削減の方法として「削減を要する職種についての執務能力と先任順位を以つて整理順位をきめる。職種先任順位が等しく執務能力も又同等なりと長上が判定した場合は会社先任順位の下の者が整理される」旨定め、さらに職種先任順位の算定については同協約第三三条B項において「会社に於いて勤務中断なしに一職種で働いた期間の総計により算定する」旨定めている。そこで被告は、右合意及び規定に従つて原告らに対し本件休業を命じたのである。

5  同5の事実は認める。

三  抗弁

仮に、本件休業について被告に帰責事由が認められるとしても、被告と組合との間において原告らが労働基準法第二六条所定の平均賃金の一〇〇分の六〇以上の金員を請求しない旨合意した。すなわち、被告と組合との間において締結された前記合意の第四項で「本合意の第二、第三項の手続によつても仕事に見合つた従業員数に削減できない場合には、会社は労基法二六条の規定を適用し、従業員をレイオフなしうる」旨定めているが、右条項は、本件休業が労働基準法第二六条に定める場合にあたると否とを問わず、原告らの休業期間中被告は原告らの平均賃金の六〇パーセントを保障し、他方原告らは被告に対し右以外の金員を請求しないという趣旨のものである。

四  抗弁に対する認否

被告主張の合意書に被告主張の条項が記載されていることは認めるが、その余の事実は否認する。

五  再抗弁

被告主張の合意書によれば、本件休業と賃金請求権との関係が明らかでなく、被告から原告らが四〇パーセントの賃金請求権を放棄し、あるいは免除したと主張されるおそれがあつたため、組合の代表者小泉安司はかかる主張の余地をなくするため、被告に対し「合意書に対する意見書」を合意書に添付する方法により、合意書に第五項として「合意書第三項及び第四項に云う労基法二六条規定に基づくレイオフについては労使間に解釈上争いがあるので別途交渉に依り解決を計る」旨の条項を加え、これを前記合意の内容とすることを条件として前記協約に合意することを申し入れ、被告はこれを承諾した。従つて原告らは、被告主張のように賃金債権の放棄ないし賃金債務の免除を認めたものではない。なお、仮に被告が右申し入れを承諾していないとしても、小泉は、これを承諾しているものと誤信して右合意をなしたものであるから、右合意は動機の錯誤により無効であり、あるいは前記条件の不成就により合意はその効力を有しないものである。

六  再抗弁に対する認否

被告が原告主張の条項を内容とすることを承諾したこと及び組合の代表者において、被告が右のような承諾をしたと誤信していたことは否認し、その余の事実は認める。

第三証拠関係〈省略〉

理由

一  請求原因1及び2の事実は、当事者間に争いがない。

二  原告らは、被告の受領遅滞により賃金請求権を取得した旨主張するが、雇用契約における受領遅滞も債務者の弁済提供の効果をもたらすのみであつて、これにより直接賃金請求権が発生するものとは解されない。従つて、その余の点について判断するまでもなく、右主張は失当である。

三  次に原告らの被告の責に帰すべき事由により労務の給付が不能となつたので原告らが賃金請求権を有する旨の主張について検討する。

1  前記のとおり、原告らは、被告から休業を命ぜられたため右期間労務の給付ができなかつたのであるから、履行が不能であつたといえる。

2  そこで被告の帰責事由の有無について検討する。

(一)  民法第五三六条第二項の債権者の責に帰すべき事由とは、故意、過失又は信義則上これと同視すべき事由をいうものと解せられ、このことは労働契約に関する場合も同様であるといわなければならない。そしてストライキを含む一切の争議行為は、労働者の団体がその意思決定に基き、その目的を達成するために行うものであつて、使用者に争議行為を停止する権限はないから、労働者が他の組合又は一部組合員のストライキによつて就労できない状態になつたとしても、使用者が不当な目的をもつて殊更に労働者をしてストライキを行わせるように企図したり、ストライキに至る経過について使用者の態度に非難されるべき点がある等特段の事由がない限りは、使用者の責に帰すべき事由があるとはいえないものと解する。

(二)  そこで本件につき右特段の事由があるか否かを更に検討する。

(1) 原告らは、被告が意図的にパイロツト組合をストライキに追い込んだ旨主張し、成立に争いない甲第四六ないし第五九号証、第六一号証、原告城間恒本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一四号証中には、右主張の一部に副う記載部分があるが、右部分は、成立に争いのない乙第三号証に照らし、直ちに信用することができず、右乙第三号証、成立に争いのない甲第六二ないし第六四号証によれば、パイロツト組合と被告との交渉が長期に及び難航したのは、交渉項目が二〇〇以上の多数にわたり、かつ、双方が容易に自己の主張を譲らなかつたことによるものであるといわざるをえない。

(2) 原告らは、被告が相互援助協定に加盟していて、ストライキ期間中かえつて利益をあげ得るため、パイロツト組合をストライキに追い込もうと企図した旨主張する。

成立に争いない甲第七、八号証、第四二号証によれば、被告は、米国の一部航空会社との間においていわゆる相互援助協定を締結しているが、右協定の骨子は、右協定に加盟する航空会社がストライキにより航空便の運行が停止した場合、右会社と競合する路線を有する他社は、ストライキにより増加した収益から増収分の運行経費を控除し、その純収益をストライキのため運行を停止している会社に支払うものとし、右支払額がストライキ開始後二週目までは同社の運行経費の五〇パーセント、三週目はその四五パーセント、四週目はその四〇パーセント、五週目以降はその三五パーセントの額にそれぞれ満たない場合には、右協定に加盟する全社が右基準額に充つるまでその差額を補償するというものであること、被告は、パイロツト組合のストライキにより航空便の運行が停止したため、その期間の補償として右協定に加盟する他の航空会社から合計約四四〇〇万ドルの支払を受けたこと、米国においては、右協定のためストライキが多発し、かつ、長期化したとの議論があることが認められる。しかし、成立に争いのない甲第四〇号証、乙第九号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第一〇号証の一、二、第一一ないし第一三号証によれば、前記協定は、米国民間航空委員会により右のような議論を否定した上で認可され、連邦裁判所によつて認可の有効性も認められていること、パイロツト組合の本件ストライキによつて被告が被つた損害額(収入減)は約八六〇〇万ドルであつたのに対し、右協定によつて支払われた補償額は約四四〇〇万ドルであつて損害額を大幅に下廻り、その他右協定に加入している航空会社が一九七二年から一九七四年までの間に行われたストライキの際右協定によつて受領した補償額もいずれもストライキによつて受けた損害額に充たないことが認められる。従つて、前記相互援助協定が存するの故をもつて、直ちに被告が意図的にパイロツト組合をストライキに追い込んだものということはできない。

(3) 従つて、本件においては、前記特段の事由に相当するような事実は認めることができない。

(三)  原告らは、被告がパイロツト組合のストライキを奇貨として組合組織を破壊し、また、当時組合との間で行われていた昭和四七年度労働協約の改訂交渉を有利にするため、非組合員と組合員を差別し、主に組合員を休業させた旨主張する。

(1) 証人友野博司の証言及び原告小泉安司本人尋問の結果によれば、組合が被告に対し昭和四六年一二月に昭和四七年度の労働協約改訂のため要求事項を提出したこと、被告と組合は昭和四六年一二月から昭和四七年六月まで労働協約改訂のため団体交渉を重ねていたこと及び組合が右要求のため一八波のストライキを行つたことが認められる。

(2) 原本の存在及びその成立に争いのない甲第四五号証の一ないし四、乙第一、二号証、第四、五号証、第一五号証の一ないし一三、第一六ないし第一九号証、証人友野博司の証言、原告小泉安司、同城間恒及び同大久保正男各本人尋問の結果(但し、いずれも後記認定に反する供述部分を除く。)並びに弁論の全趣旨を綜合すれば、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(イ) 被告の日本支社は、組合との昭和四七年度労働協約改訂交渉において、組合から一時金の算定基礎に住宅手当を加算すべきである旨要求されていたので、昭和四七年六月二九日の団体交渉において本社に問い合わせた上でこれに対する返事をする旨回答し、翌三〇日に団体交渉を予定していたが、同日これを本社に問い合せたところ、本社は、パイロツト組合のストライキが差し迫りこれの対策で混乱していたため、右の件についての本社の回答が得られなかつた。

(ロ) 同年七月一日本社からパイロツト組合がストライキに突入した旨の連絡を受けた日本支社は、パイロツト組合のストライキによる業務停止の対策として、スーパーバイザー以上の管理職にある者を除いた全従業員を各職場の業務の減少程度に応じて順次休業させることにした。そして被告は、同日従業員の休業の方法及び順序を定める合意書を作成し、これを組合に提示しその同意を求め、組合は翌二日右合意書に署名をしてこれに同意した。右合意書の第二項で「従業員は現在保持している休暇日数の枠内において休暇をとる事ができる。」、第三項で「従業員は労働基準法第二六条の規定に基づいたレイ・オフ又はリーブ・オブ・アブセンスを願い出ることができる。」、第四項で「本合意書の第二、第三項の手続によつても仕事に見合つた従業員数に削減できない場合には、会社は労基法第二六条の規定を適用し、従業員をレイ・オフなしうる。レイ・オフの適用順位は、一九七二年一月三一日付で失効した労働協約の第二四条の規定に基づいて行なわれる。」旨定められ、一九七二年一月三一日付で失効した労働協約第二四条では「A 人員削減の必要が生じた場合はその削減を要する職種についての執務能力と先任順を以つて整理順位をきめる。職種先任順位が等しく執務能力も又同等なりと長上が判定した場合は会社先任順位の下の者が整理される。」と定められている。

(ハ) 被告は、管理職にある者を除く全従業員を対象にして、各職場ごとに業務の減少程度に応じて順次休業を命じ、右休業の順序は、組合との合意に基いてなされた。管理職にある者が休業の対象から除かれたのは、ストライキ中における各職場の管理及び運行再開に即応し得る体制を整えておく等の業務上の必要があつたことによるものであつた。

(ニ) 管理職を除く非組合員で休業を命ぜられなかつた者は、日本支社の一部幹部の秘書、営業課員全員、会計課員全員、人事部員二名(但し、一名は後に休業を命じられた。)であるが、秘書はストライキ中といえども幹部の補助業務があり、営業課員は運行停止による顧客からの苦情の処理等の業務があり、会計課員は、休業中の従業員の休業手当計算等の事務があり、人事課員は組合との間で労働協約改訂交渉の事務があり、いずれも業務上の必要から休業を命ぜられなかつたものであつた。また、業務の必要から休業を命ぜられなかつた者のうち組合員が一三名いたが、他方、業務上の必要がなかつたため休業を命ぜられた者のうち一二名のツアーエスコート、七〇名の客室乗務員、二四名の新規採用者ら非組合員もいた。

(ホ) 予約課では、管理職を除き全員が休業を命ぜられているが、これは運行停止によつて同課の業務がほとんどなくなつたことによるものであり、八月に他の職場の者が予約四本を受付けているのは臨時になされた処置である。旅客課ではストライキ当時ワールド・エア・ウエーズ航空のチヤーター便の代行業務があつたが、同社の便は管理職が処理しうる程度の僅かな本数であつたため、課員全員に休業が命ぜられた。運行課では管理職にあつた二名を除く六名のうち組合員である佐伯嗣郎及び彦根克則の両名が休業を命ぜられているが、右両名が他の者に比して職種先任順位及び執務能力が下位であつたことによるものであつた。

(3) 以上によれば、被告は、パイロツト組合のストライキにより航空便が停止したため、日本支社の業務が減少し従業員全員に就労させることが不可能となつたので、従業員の休業の方法順序について組合と協定を結び、各職場の業務量の減少に応じてそれに必要な限度で休業を命じたものであることが認められ、原告らに対する休業命令はその程度、態様、方法等において適正妥当なものといわなければならない。従つて休業命令が違法であることを前提とする原告らの主張は採用し得ない。

3  右のとおり、パイロツト組合のストライキの発生が被告の責に帰すべき事由に基くものと認めることができず、しかも、右ストライキに基因して、被告が原告らに不当に休業を命じたことは認められないから、原告らの履行不能が被告の責に帰すべき事由によるものとは認めることができない。

四  よつて、原告らの本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないから、いずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条第一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 桜井文夫 福井厚士 仲宗根一郎)

(別紙、別表省略)

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